第10話

 

日の光をバックにその人は立っていた。

「お待ちなさい」

「え?」

「その代金、私が支払いいたしますわ」

「ええっ、あ、あなたは?」

「もうお忘れですの、アレフレッド様」

「あっ、フィリシア!!」

フィリシアだった。

あの言葉は本気だったのか。

始めてあった時とは全く違う冒険者用の服を着ていた。

「そ、その格好は・・・」

「もう、私アルフレッド様についてゆくって決めたのに」

「い!?ま、まじ・・・スか」

「本気ですわ、私、アレフレッド様をお慕いしています」

「・・・・・・。あんた、本気でここの金、払ってくれんのかよ」

「ええ、でも条件があります」

「条件?」

「それを聞いて頂けるのならお支払いいたしますわ」

「わかった、いいだろう」

「ちょ、ちょっとセナっそんな簡単に」

「いいじゃねえかよ。金払ってくれるって言ってんだぜ」

「爺や、ここへ」

「はい、お嬢様」

「代金は如何程でございましたでしょうか」

「5000G」

「わかりました。それでは10000Gお支払い致しましょう」

「は?なんでだよ」

「ほんの気持ちですわ」

(気持ちで5000G?こいつすげえ金持ちなんだな)

「はは、確かに承りました。あの、失礼ですがお名前をお聞かせ頂けますか?」

急に腰が低くなった支配人は恭しくフィリシアに言った。

「私の名前ですか、フィリシア・ディアスと申します」

「え、あのディアス家のフィリシア様でございますか。これはこれは失礼いたしました」

「いいえ、お構いなさらずに」

ディアス家とは貴族の中でも有数な大企業を営んでる一族だ。

特にフィリシアは直系の息女だった。

とにかく凄いお嬢様である。

「へぇー、フィリシアって凄い人だったんだね」

「まあ、アレフレッド様ったら。私は私です。ただ生まれがディアスだっただけですわ」

「それはそうなんだけど」

「んで、条件ってなんだよ。お嬢様」

「セナっ」

「はいはい」

「私のお父様に会ってくださいませ」

「え・・・」

「それが条件ですわ」

「あ、あの・・・俺が・・・スか」

「はい、アレフレッド様です」

「なーんだ、そんなことか」

「そんなことって、でもなんで俺が?」

「私のお慕いしている方のお顔をお父様に知って頂きたいのです」

「え・・・」

「よし、じゃあアレフ、ちょっくら行ってこい」

「い、行ってこいって・・・」

「では参りましょう」

「うわ、ちょっとフィリシア待って」

アレフはフィリシアに引きずられるようにして酒屋からでていった。

「しかし、アレフもすみにおけねえな」

「へへ、姉ちゃん、焼き餅かい」

「なにぃ、なに言ってやがんだ、おめえ」

「兄ちゃんのこと気にしてっからよ」

「くだらねぇ。カンケーねえよ」

「それはそうと姉ちゃん。このロープ解いてくんねぇか」

「嫌だね」

「姉ちゃん、頼むよ」

「元はと言えばてめえのせいだろうが」

「なははは、昔のことは忘れよーぜ、なっ」

セナはタータを無視して外に出て行こうとした。

「ちょっ、姉ちゃん、俺が悪かったって。反省してる」

「ほーお、じゃあ、どんな風に責任取るつもりなんだ」

「責任ねぇ・・・、金はねえけどよ、俺の術は絶品だぜ」

「それで?」

「だから、姉ちゃんの手伝いが出来ると思うんだけどよ」

「手伝いだと・・・」

「そーだぜ、旅してんだろ、魔術師が1人ぐらいいたほうがいいと思うんだがね」

「・・・・・・、分かった」

セナはタータのロープを解いてやった。

「うーーーー、はぁ、楽になった」

「ただし、もう人を騙すんじゃねえぞ」

「わーってるって」

「それに・・・お前にはいろいろと聞きたいこともあったんでな」

セナはそのまま椅子に腰掛けた。

そしてジェスチャーでお前も座れというようなことをいった。

「お前、なにを知ってる?」

「へ?」

「なにを知ってると聞いているんだ」

タータは椅子に座ると真剣な顔をした。

「まさか、おめえ・・・」

「なんのことだ?」

ふいにクロッサルが声をかけた。

「うわああっ」

「どあっ」

2人は驚いて椅子ごと後に倒れてしまった。

「く、クロッサル、いつからそこに」

「なに言ってんだよ、最初からいたろ。ったく、みんなで俺を無視しやがって」

「び、びっくりしたあ、兄ちゃん、驚かすなよ」

セナは起きあがって椅子を戻すとクロッサルに向かって言った。

「クロッサル、あたしはこいつとちょっと大事な話がある。悪いが席をはずしてくれ」

「大事な話?・・・・・・分かった」

そう言うとクロッサルは酒屋から出て行った。

「おい、いつまで寝っ転がってんだよ」

「あ、ああ」

タータも起きあがって椅子を戻した。

セナは深く椅子に腰掛け、足を組んだ。

「さてと、知ってることを言ってもらおうか」

「その前に、俺にも質問がある」

「・・・・・・なんだ」

「お前の名前だ」

「・・・・・・・・・」

「じゃあ、頷くだけでいい。お前は・・・」

 

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