第12話

 

「ファイヤーーーッ!!」

「ブリザーードッ!!」

魔術師が加わったことで旅は前より楽になっていた。

「いよしっ、俺に任せろっ」

「行くぜっ」

「おおっ」

魔術で敵をひるめて一気に畳み掛ける。

「ずりゃあああっ」

セナの剣はますます冴え、今ではよっぽど強い敵ではないと1瞬にして片付けてしまう。

アレフは今でも夜の秘密特訓を続けている。

そのせいもあってか、どんどん強くなっていった。

もっとも、その特訓のことをセナは知っていたし、時には相手になってくれることもあった。

「へへへっ、大漁大漁」

タータはニコニコしながら金貨を拾っている。

クロッサルは倒したモンスターを焼いて肉を食べ始めた。

「ん、こりゃ、うめえ」

バクバクバク

前の事件でも分かったことであろうがクロッサルは大食漢である。

たちまち1頭分を1人で平らげてしまった。

フィリシアは大木の枝に腰掛けて髪をとかしている。

そういうことろを気にする所がやっぱり女の子だ。

セナはそう言う所は気にしないので。

そのセナはというと・・・。

「なにしてんの、セナ」

アレフはボーッと離れた所で1人座っていたセナに声をかけた。

「ああ、アレフ・・・」

「隣、いいかな」

「別にかまわねえよ」

アレフはセナの隣に腰をおろした。

「ねえ、セナ。なんか悩みがあるんじゃないのか」

「何でそう思うんだ?」

「え、なんとなくだけど、落ち込んでるかなって・・・」

「別に悩みなんてねえよ」

「それならいいけど」

「アレフ・・・」

「うん?」

セナは小枝をつまんで地面に『の』の字を書いている。

「?」

「もしさ、あたしが実はとんでもない目的のために、その自分の・・・なんていうか自分の為だけに戦ってるとしたらどう思う?」

「・・・・・・話が抽象的すぎてよく分からないけど、うーん。別にいいんじゃないかな」

「・・・・・・」

「その、なんだ。俺達はさ、仲間だろ。仲間のためだったらどんなことでもできると思うよ」

「そうかな・・・」

「そうさ、セナは仲間を信じられない?」

「そんなことはないっ、・・・・・・でもあたしがどっかの姫さんだったりしたら・・・」

「はあ?どっかの姫さんって・・・」

「だから、例えばだよ」

「そーだな、セナが姫さんでも姫さんじゃなくってもセナはセナだろ、変わらないよ」

「アレフ・・・」

「でも、なんでそんなこと聞くのさ」

セナはその問いには答えず、いきなり立ちあがった。

「よっしゃ」

「せ、セナ?」

「ぐだぐだ悩むなんてあたしらしくねえよな。サンキュー、アレフ」

「え、うん」

「お前、結構頼りになるよな」

「け、結構だとっ」

「はは、悪い悪い」

アレフも立ちあがってセナの肩に手を置いた。

「そう思うならさ、俺達も頼ってくれよ。1人で悩んだりしないで」

「あ、アレフ」

「俺・・・」

その時、ガサガサッと草をわける音が聞こえてフィリシアがひょこっと顔を出した。

「あーーーっ、見つけましたわ、アレフレッド様」

「ふぃ、フィリシア!?」

「セナさんと2人でなにをしているんですの」

「べ、別になにもしてないよ」

そういうとアレフはセナの肩に置いていた手をサッと後へ隠した。

「怪しいですわ」

「な、なにを言っているんだ。フィリシア」

「セナさんっ」

「な、なんだよ」

「セナさんはアレフレッド様のことをどう思っているのですか」

フィリシアは突然ズバッと聞いた。

「は?」

「ですから、アレフレッド様がお好きなのですか?」

「まあ、嫌いじゃねえよ」

「お嫌いではないということはお好きなのですね」

「そういうことになるかな」

「それならば2人はライバルですわ」

「へ?なんで」

「私、負けませんっ」

フィリシアの勢いに圧倒されていたアレフだったが、ようやく口を開いた。

「ちょっと待って、フィリシア誤解してるよ」

「なにが誤解なのですか」

「だ、だから俺達は」

「俺達・・・」

「だーーーっ、話の腰を折らないでくれるっ」

「酷いですわっ、アレフレッド様、私がお嫌いなのですね」

「え?」

「私を追い払おうとして怒鳴るなんて・・・」

「ち、違うっ、嫌いじゃないよ、フィリシア」

「本当ですか」

「も、勿論」

「では好きなのですね」

「も、勿論」

「セナさんよりも?」

「も、勿論・・・・・・はっ」

「分かりました。それを聞いて私安心いたしましたわ」

「ちょ、ちょっと」

「それではごきげんよう」

るんるんとスキップをしながらフィリシアは歩いていってしまった。

「あああああ・・・」

アレフは顔面蒼白。

ヘタヘタと地面に座り込んだ。

「よかったな、両思いだぜ」

「セナ・・・」

「ちぃっとばっかし、思い込みが激しいけどよ、いい子だと思うぜ」

「それは俺も思うけど・・・」

「けど?なんだよ」

「その、恋ってのとは違うと思う」

「・・・・・・じゃあお前、フィリシアの事を・・・」

「好きだけど、それは仲間としてだよ」

「ふーん」

「セナは好きな人がいる?」

「そうだな・・・昔、いたかな」

「昔、か・・・」

「そろそろ戻ろうぜ、出発しねーとな」

「あ、うん」

2人はみんながいる場所へと戻った。

 

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