第13話

 

ブロボンの街はシュバーレの街から歩いて1週間ちょっとぐらいだ。

もうすぐつく頃だろう。

5人は連れ立って森の中を歩いていた。

その時、空から男が降ってきたのだ。

「はっ」

男は5人の前で空中で1回転するとストンと地面に降り立った。

「!?」

「!!」

「な、ななな」

「まあっ」

「ほうっ」

男はこちらを向くと一礼した。

「驚かせてすまぬ、拙者、足を滑らせたでござる」

「あ、足を滑らせたってどこから?」

「拙者、木を渡っていたが、突然鳥が飛び立ったのでバランスを崩したでござる」

「木を・・・?」

「拙者、修行中の身でござる。これにて御免」

そういうと男は飛びあがり、木の枝を伝って何処かへ消えてしまった。

「世の中には変わった奴もいるもんだな」

「それよりもよーあいつのしゃべり方どっか変じゃねえか」

「たしか、修行中って言ってましたわ」

セナは男の消えていった方向をずっと見つめていた。

「セナ?」

「あいつのあの目・・・」

「ああ、盲目だったね」

「気付いたのか?」

「うん」

「・・・・・・」

(あの1瞬で気が付くとはアレフの奴、動体視力がいいんだな)

「どうしたのさ」

「ああ、いや。さてと見ろよ、ブロボンの街が見えるぜ」

「あ、本当だ」

「私、疲れましたわ。早く宿屋で休みたいです」

一行はブロボンの街に入った。

だが、どうも雰囲気がおかしい。

「よお、なんか変じゃねえか」

クロッサルが小声でアレフに言った。

「うん、街人が1人もいない」

そう、街の中は人1人、いやそれよりも動物も虫でさえもいなかった。

「おかしいぜ、こりゃあ、静か過ぎる」

タータはあたりを見まわした。

「アレフレッド様・・・」

フィリシアはアレフの服の裾を引っ張った。

「どうしたの、フィリシア」

「・・・邪気が・・・・・・この街には邪気が漂っています」

「邪気?それはなんだい」

「簡単に言ってしまうとモンスターの気でとも言いましょうか。しかし、今まであったこともない強大なものですわ」

「・・・・・・セナ」

アレフはセナの方を向いた。

「わかってる・・・しかし、この気は・・・」

セナは剣の鞘に手をかけた。

その時、どこからともなく声がした。

「まだ、人間が残っていたとは・・・、あたしとしたことが」

「誰だっ」

「あらあら、元気のいいお嬢さんね。心配しなくてもすぐに皆の所へ逝かせてあげるわ」

そう言うとその声は呪文を唱え、セナ達目掛けて攻撃してきた。

「ファイヤーーーーボールッ」

「タータ、フィリシアッ」

「任せろ、バリアーーーッ」

タータがバリアをはり、フィリシアが敵の場所を感知する呪文を唱え始めた。

「セナさん、あの屋根の上ですわっ」

「よしっ」

セナは小刀をそこに向かって投げた。

「くっ」

声の主はそれを避けてセナ達の前に降り立った。

「なかなかやるじゃない」

それは人間の格好をしていたが明らかに魔族だった。

「魔族・・・」

フィリシアが呟くとそいつはニコッと笑った。

「あら、わかるのね。あんたたち、只者じゃないわね」

「てめえがこの街をこんなにしたのかよっ」

クロッサルが怒鳴った。

「そうよ、見て分からない」

「何の為にこんなことするんだ」

アレフは1歩前にでた。

「何の為?理由なんかないわよ。そうねえ、強いて言えばルーゲン様に褒めてもらうためかしら」

「ルーゲン!!」

その言葉にセナが反応した。

「ルーゲン様を呼び捨てにしないで欲しいわね」

「おい、婆あ。てめえ、今確かにルーゲンと言ったな」

「ば、婆あ!!」

魔族の方もそれに反応する。

「答えろ、婆あっ」

「ま、また婆あと言ったわね。あたしは魔族の中じゃ若い方なのに」

「いやあー女の戦いってのは怖いもんだねー」

タータはどこから出したのか座布団に座ってお茶を飲んでいる。

「タータビネーニョさん、緊張感にかけるなあ、もう」

「んじゃあよ、アレフ。お前この戦いとめられるか?」

「う・・・」

「だろ、こーゆーのはほっときゃーいいんだよ」

「そ、そうかな」

アレフは2人のほうを見た。

「婆あを婆あと言ってなにが悪いんだよ」

「きーっ、こ、この生意気な小娘めっ」

「婆あっ」

「きーっ、男女っ。あんたなんてね、一生男なしで終わるのよ。そんなに口が悪くて顔も悪けりゃしょうがないけど」

「な、なんだとっ」

いつのまにか内容が摩り替わっている。

「お前に顔のこと言われたくねーよっ」

「な、なんですってえ」

「だいたいお前、人のこと言える顔かあ」

「どういう意味よっ」

「まあまあ、お2人とも見苦しいですわよ」

フィリシアが見かねて止めに入ったが、それは日に油を注ぐようなものではないだろうか。

「うっせえ、お前はひっこんでろっ」

「なによ、この乳臭い娘2はっ」

「んだとぉ、じゃあ、あたしは1だって言うのかっ」

「そうよ、わかってんじゃない」

「・・・・・・乳臭い・・・」

「あ?なんか言ったか?」

「なによ、この辛気臭い女は」

「・・・・・・辛気臭い・・・」

フィリシアの瞳が怪しく光る。

「ご、ごくっ」

アレフは思わず唾を飲み込んだ。

「こいつは凄えな、こんな凄え戦いは滅多に見られねえぞ」

「お、女・・・女が一杯・・・」

クロッサルがふらふらしている。

「貴方達っ」

ふいにフィリシアが叫んだ。

 

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