第15話

 

「りゃああああっ」

「トルネードッ」

タータは竜巻を起こす呪文を唱えた。

竜巻はシュブレナリーオを取り囲んでいく。

「くっ、こんな呪文であたしが倒せるわけないでしょ」

シュブレナリーオは魔力を高めると外に発した。

そしてその光に竜巻はかき消されてしまった。

「な、なに!?」

セナがシュブレナリーオに剣を振り下ろしたその瞬間、彼女は手を伸ばしセナ目掛けて呪文を発した。

「ライトッ」

手先がピカッと光り、目が眩んだセナはシュブレナリーオとは全く違う場所を切りつけていた。

その剣は屋根に深く刺さってしまい、なかなか抜けない。

「すこーし、甘かったようね。セナ」

シュブレナリーオはにっこり笑うと指先をセナの額にくっつけた。

「おやすみなさい・・・」

「!!」

「せっ、セナあああああっ!!」

タータが絶叫する。

その時、剣が飛んできた。

「!?」

その剣はシュブレナリーオの腕を掠め、そのまま大木に突き刺さった。

「誰だっ」

シュブレナリーオは剣が飛んできた先を見た。

「へへへ・・・俺を・・・甘く見ないでほし・・・・・・」

アレフだった。

全身火傷なのに最後の力を振り絞ってセナを助けたのだ。

セナはその隙に剣を抜き、構えている。

「ふっ、ぼうや、やるじゃない。坊やから先に殺してあげるわ」

「くっ・・・」

「なっ、アレフーーーッ」

セナが叫んだが、シュブレナリーオの手からはもう呪文が発動した後だった。

(これまでか・・・父さん、ごめん・・・)

アレフは目を瞑った。

しかし、いつまでたっても当たる気配がない。

アレフがそうっと目を開けると、前に人が立っていた。

「!!邪魔するなあっ」

シュブレナリーオは次々と呪文を投げかけてくる。

その人はじっとそれを腕で受け止めていた。

「はあはあはあ、な、何者・・・」

ようやく呪文が止まるとその人は顔の前でクロスを組んでいた腕を下ろした。

「ここは拙者の街でござる。この街をこんなにしたのはお主でござるな」

聞き覚えのある声だ。

アレフは目をこらしてその人をじっと見た。

「あ、あなたは森であった・・・」

「仁・バリュゲントでござる」

その人はアレフのほうを向くとにこっと笑った。

「ここは拙者に任せるでござる」

「す、すいません」

「なあに、先ほどのお主の行動は敬意に評するでござる。拙者、お主の力になるでござる」

「は、はい」

「それよりもそちらの方たちは大丈夫でござるか」

「あ・・・フィリシアっ、クロッサルっ」

アレフは2人の傍まで這っていき、息を確かめた。

「だ、大丈夫です・・・生きて・・・ます・・・」

安心するとアレフは気を失ってしまった。

それを確認すると仁は前を向き、ジュブレナリーオを睨んだ。

「拙者、お主を許さないでござる」

「な、生意気な・・・」

シュブレナリーオは怒りに震えている。

「おい、あいつはなかなか手ごわいぜ。1人で大丈夫か」

タータが仁に声を掛けた。

「心配ご無用。拙者に任せるでござる。はやくこの者達を」

「お、おう」

セナは屋根から飛び降りるとアレフに走り寄った。

「まったく、あたしの邪魔ばかりするのね。あんた達は」

「お主が無意味なことをするからでござろう」

「こ、この・・・エクスプロー・・・」

仁はその呪文を唱え終わらないうちにシュブレナリーオに切りかかっていた。

「ぎゃあああっ」

剣はジュブレナリーオの右肩に食い込んだ。

「次は左肩でござる」

「く・・・」

仁はすばやくもう一度切りかかった。

言ったとおり剣は左肩を捕らえた。

「うがああああっ」

シュブレナリーオは青い血を撒き散らしながら飛びあがった。

「こ、この借りはいつか返すわよっ、テレポートっ!!」

そして姿を消してしまった。

(強い・・・)

セナの頬には汗が流れていた。

仁はゆっくりとセナのほうへ歩いてくるとそこにしゃがみ込んだ。

「大丈夫でござるか」

「命に別状はねえと思うけど・・・タータビネーニョ、お前、回復呪文使えるか?」

「悪りぃ、俺は使えん」

「まいったな、この街に人いねぇし・・・よぉ、隣街までどのくらいかかる?」

「ざっと5日はかかるでござる。それも走ってでござる」

「それまで放っておくわけにもいかねえだろ・・・」

「はぁ、はぁ、はぁ」

「フィリシア、大丈夫かっ」

「はぁはぁはぁ、心配は・・・要りませんわ・・・。アレフレッド様はご無事・・・ですか」

「無事だ。お前が守ったからな」

「よかった・・・ですわ・・・」

「くっ・・・」

よろよろと剣を杖代わりにクロッサルが起きあがった。

「おいおい、無理すんな」

「なさけねえぜ・・・まったく・・・」

どすっと尻餅をつくと木に寄りかかってからクロッサルは仁に気が付いた。

「そいつは・・・?」

「仁っていうんだと。俺らを助けてくれたんだ」

「そうか・・・すまねえ・・・」

「礼はいらぬ。当然でござろう」

「仁、すまねえが、あの大木に刺さっているアレフの剣。取ってきてくれねえか」

「アレフというのはこの少年でござるか?」

「そうだ」

「承知した」

仁はさささと走って木に飛び移った。

「速え、あいつはなにもんだよ・・・」

「わからねえ、あれで盲目なんだぜ」

「盲目だと・・・」

「参ったぜ、俺は自分では結構強えと思ってたんだが、まったく歯が立たなかった・・・」

「そうだな・・・」

仁は剣を抜くと今度は歩いて戻ってきた。

「これでいいでござるか?」

「ああ、ありがとよ」

セナは剣を受け取るとアレフの横に置いた。

 

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