第17話

 

「・・・・・・あ」

セナはその顔に見覚えがあった。

昔、とてもセナはその人に懐いていた。

忙しい父に代わってその人が父代わりだったのだ。

「どうしました、まだどこかに怪我でも?」

しかし、その人はセナに気が付かないようだ。

無理もない、その人が知っているセナはまだ小さい子供だったのだから。

「あ、いや。仲間も怪我をしているんだ。診てやってくれないかな」

「あーはいはい、勿論いいですよ」

その人は3人を見ると安心させるようにセナに微笑みかけた。

「大丈夫、すぐ直ります」

「そ、そうか良かった・・」

3人の真上に手を翳すと目をつぶり気を高めている。

「・・・・・・・・・」

(・・・・・・爺や・・・)

真剣な顔も変わっていなかった。

セナが勉強をやらないで遊びに行ってたことを叱った顔。

セナが悲しいとき慰めてくれた顔。

すべて昔のままだ。

ただ違うことは白髪が増えたことだろうか。

「キュアーッ」

光が3人を包み込み、はれた時には火傷は綺麗に消えていた。

「ああ、良かった・・・」

「これで大丈夫でしょう。まあ、しばらくは無理をしないことです」

「ありがとう、助かった・・・」

「旅の方ですか、私もです。しかし、この街は一体どうしたのでしょうね」

「魔族に・・・魔族に滅ぼされたんだ・・・」

その言葉にその人は反応する。

「魔族・・・ですか・・・」

「さてと、仲間はあと2人いるんだ。薬草と医者を探しに行っちまってね。すまねえがこいつらを見ててもらえねえか、探してくるから」

「はいはい、お安いご用です」

セナは指笛を吹いて街の外に放していたシルバーを呼んだ。

タッタッタッタッ

すぐにシルバーはセナの所に走ってきた。

「!!そ、その馬は・・・」

「え・・・」

「・・・・・・シルバー・・・まさか・・・」

「・・・・・・こいつを知ってるのかい」

「い、いえ・・・知っている馬によく似ているもので・・・」

「・・・・・・・・・」

「しかし、どう見ても・・・」

「ひひひひーん」

シルバーはその人に擦り寄った。

「!」

「!」

「あ、こ、こらっ」

その人はシルバーを撫でていた。

「やはり、シルバーなのか・・・それでは姫様は・・・・・・!!」

「・・・・・・」

「ひ、姫様!?」

「な、なんのことだ」

「姫様なのでしょう・・・でなければシルバーがこんなに懐くはずが・・・」

「ひ、人違いだ」

その時、アレフが目を覚ましてしまった。

「う・・・、せ、セナ?」

「!!」

「や、やはりセナ姫っ」

「ち、違うっ、あたしは姫なんかじゃない、姫なんかじゃ・・・」

「セナ・・・、どうし・・・あれ傷がない・・・・・・」

「姫様、爺やは分かります。分かりますとも」

「爺や・・・あたしは・・・」

「お探ししておりました。ずっと・・・」

「・・・・・・爺や・・・爺・・・うわあああああっ」

セナはその人に抱きつくと大声で泣き出した。

「セナ・・・」

「お可哀想に・・・ずいぶんとお辛い目になったのでしょう。しかし、よくご無事で・・・」

「爺・・・爺・・・・」

その人は優しくセナの頭を撫でた。

「姫様・・・」

セナが落ち着くとその人は改めてアレフに頭を下げた。

「ヤーゼン・ワータリオと申します。姫様がお世話になりまして」

「え・・・姫って・・・」

「は?・・・・・・ああ、ああ。豆様と言ったのですよ」

「ま、豆様?」

「・・・・・・おい」

「そうです。私は豆が大好物でして、ああなんと豆に似た愛らしいお顔なのでしょう」

「は・・・はあ」

「(ピクピク)おい」

「失礼ですが、あなたは?」

「あ、俺はアレフレッド・サンダロスと言います。セナと一緒に旅をしている者です」

「そうなのですか、アレフレッド様ですか。姫様、良いお仲間がお出来になりましたね」

「や、やっぱり姫って・・・」

「あ・・・」

「豆って言ったんだよ。なあ、ヤーゼン」

「ははは、そうでしたそうでした」

アレフは腑に落ちない顔をしていたがふと気が付いたように言った。

「そ、そういえば俺の怪我、なんで消えてるんだろ」

「ヤーゼンが回復呪文をかけたからさ」

「あ・・・僧侶だったんですか」

「はは、まあ、そうです」

「あ、フィリシアっ、クロッサルっ」

アレフは横にいた2人を振り返った。

2人は穏やかな表情で眠っている。

「あんなに酷かった怪我を・・・。ヤーゼンさんって凄い人なんですね」

「いえいえ、そんなことは」

「あの・・・ところでセナとはどういう関係なんですか?」

「そ、それは・・・昔、姫・・・セナさんのお父様にお世話になっていましてね」

「へえ・・・」

「本当に残念なことです・・・」

「・・・・・・昔のことだよ」

「・・・・・・??」

その時、タータが薬草探しから帰ってきた。

「おーい、多分これだと思うんだけどよー・・・あれ、アレフ?」

「ども、なんか直してもらったみたいなんです」

「直してもらったって・・・、あーーっ!!お、お前はっ」

タータはヤーゼンを指差した。

「なんとこんなところで会おうとは」

「アレフっ、な、なんでこいつがいるんだよっ」

「そ、そんなこと言っても俺も今気付いたばかりですよ」

「セナっ」

「・・・・・・・・・爺やだ」

「!!、なっ・・・お前・・・じゃあ・・・」

「そうか、お主は知っておったか」

「さっきから皆さんなんの話をしているんですか?」

訳がわからずアレフは尋ねた。

するとセナはふうっとため息をついた。

「アレフ・・・」

「な、なに」

「今までお前達に黙っていたことがある」

 

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