第9話

 

次の日、宿屋を出たアレフとセナは昨日タータビネーニョがいたところに行ってみた。

「今日はやってないみたいだね」

「んー、どこにいんだ?あいつら」

「そ、そりゃあ・・・女郎とかじゃないの・・・」

「女郎?なんだ、それ」

「え・・・そ、それはその・・・ごにょごにょ」

「あー、ったくはっきり言えよ」

「だ、だから女の人を買うところだよ」

「人身売買か」

「ち、違う。そうじゃなくて」

「んじゃなんだよ」

「そ、それは、男の人が自分の・・・欲求を発散させるために・・・」

「あん?もうちぃっと分かりやすく言ってくんねえか」

「いや、だから・・・」

2人がそんなことを話しているところへ男が近づいてきた。

「よおっ、昨日の兄ちゃんだよな」

「あ、タータビネーニョさん」

「あ、お前クロッサルはどこだ?」

「だから、それを伝えに来たんだろ」

「はあ・・・」

タータは2人をじろじろと見た。

「んだよ、じろじろ見やがって」

「なあ、兄ちゃん達は恋人同士か?」

「え・・・」

「いやさ、あの兄ちゃんがさ、今ちぃっとすげえことになってんよ。

もし、そっちの姉ちゃんがさ、あいつに惚れてんならこねえほうがいいぜ」

「なに言ってんだ、お前。早く連れてげよ」

「セナ、そんな言い方・・・」

「ははは、わーったよ、付いてきな」

タータに連れられて2人は酒屋の中に入った。

「うわっ、酒くさー」

「こ、こんなところにクロッサルいるのかよ」

「いるぜ、ほらそこに」

タータが指差した先には上半身裸になってまわりに女をはべらせているクロッサルが酒を飲んでいた。

「がはははっ、おらあ、酒持ってこーいっ」

「きゃあー素敵ぃー」

「はははは、そうだぜ、俺様は世界一格好いいのだああーっ」

「きゃーんっ」

「・・・・・・く、クロッサル?」

アレフが声を掛けるとクロッサルはとろんとした目でこっちを見た。

「んー、アレフじゃねえか。女はいいぜぇ、ほーれほれほれ」

「あんっいやん」

クロッサルが女の胸を突っつく。

「・・・・・・・・・」

セナは下を向いて体をぶるぶると震わせていた。

「ね、姉ちゃん・・・」

「てめえぇぇぇぇぇぇぇっ!!!1ぺん死ねえぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

セナは大声で叫んで剣をクロッサルに振り下ろした。

(注:竿付き)

普段のクロッサルならなんなく避けられただろう。

しかし、今のクロッサルはべろんべろんに酔っ払っていた。

「ぐひえええええっ」

剣はクロッサルに命中、そのまま後にぶっ倒れた。

「きゃあああ」

「いやーーーっ」

女達が散り散りに逃げ出して行く。

「く、クロッサルーーーっ!?」

アレフは慌ててクロッサルを助け起こした。

案の定クロッサルは目をまわして気絶している。

「セナっ、なんてことするんだっ」

「うっせえっ、こんなところに1晩中いやがったのかっ」

「ね、姉ちゃん、なんで姉ちゃんが怒るのさ。やっぱこの兄ちゃんに惚れてんのか」

「馬鹿野郎っ、こんな所にずっといたら金なんてすぐに飛んでっちまうだろうっ」

「へ?」

「あーあ、こんなに飲みやがって・・・。おい、支配人っ、支配人はいるかっ」

「は、はい。私がこの店の支配人ですが・・・」

「・・・幾らだ」

「はあ?」

「幾らかかったかって言ってんだっ」

「はあはあ、えーと、全部で・・・あ、少々お耳を拝借」

「ん」

支配人がセナに耳打ちする。

端で見ているアレフにはその声は聞こえていないが、

セナの表情がみるみる変わっていくのでその金額がどれだけ大きいか分かった。

「・・・・・・支配人、こいつとあたしは全くの無関係だ」

「ちょっ、セナ、なに言って・・・」

「金はこいつ自身に払わせろ、分かったな」

「セナっ」

「うるせえっ、5000Gだぞ、ったく高けぇ酒ばっか飲みやがって。おいっ、タータビネーニョっ」

「は、はい」

「この落とし前どうつけてくれんだ、ああ」

「い、いや、どうって言っても俺はここに連れてきただけだし・・・」

「てめえにも責任あるよなぁ」

「待てっ、待て待て。俺は一滴も飲んでないぞ」

「いえ、そちらのお客様も飲んでいられました」

「なっ、支配人っ。なんてこと言うんだ。この兄ちゃんがおごりって言ったんだぜ」

「飲んだんだよなあ、タータビネーニョ」

「う・・・」

「お前が払え」

「じょーだんじゃねえっ、飲んだことは認めるが、大半はこの兄ちゃんだぜ」

大きい声で怒鳴りあっていたので倒れて気絶していたクロッサルが目を覚ました。

 

「う・・・ううん・・・」

のっそりと体をあげる。

「クロッサルーーーーっ、てめええっ」

「セナ・・・どうしたんだ・・・」

「どうしたじゃねーーーっ、5000Gだぞ、どうしてくれるんだっ、こらあっ」

「5000G・・・・、え?な、なにぃっ」

「あちゃー、やべえ・・・」

「タータビネーニョ、お前が200Gで飲み放題って言ったんだろ」

「なにっ」

「はははは、そーんなこと言ったかしらん」

そのセリフを残し、タータは酒屋から逃げ出した。

いや、逃げようとした。

アレフはタータの脚にロープを括り付けていたのだ。

それと知らず外にでようとしたので、タータは顔から地面にずっこけた。

「ふぎゃっ」

「甘いですよ、タータビネーニョさん」

「兄ちゃん、素質あんぜ・・・」

タータはロープで縛り上げられ、柱に括り付けられた。

「騙したんだからよ、ここはお前持ちだぜ」

「金なんて持ってねえよ」

「そーんなこと信じられっか。アレフ、調べろ」

「え?調べるって」

「服脱がして調べろって言ってんだ」

「え、そんなこと・・・」

「いいから、言うとおりにしろっ」

「わかったよ・・・」

服をすべて脱がしたがタータの全財産は624G。

ぜんぜん足りやしない。

「んなああああっ、てめええっ」

「だからさ、持ってねーって言ったろ」

「セナ・・・どうすんの」

「うぅー・・・クロッサルー・・・・」

「す、すまん」

3人がこそこそ話していると後から支配人が声をかけた。

「お客様、それでお代は・・・」

「う・・・ははははは、アレフぅ」

「え・・・へへへへへ、クロッサルぅ」

「い・・・ひひひひひ」

「お客様・・・」

顔は笑っているが、額には怒りのマークが浮かんでいる。

「え、えーと」

「払えないのでしたら、それなりの処置を取らせて頂きます」

「しょ、処置?なんですか、それは・・・」

「ただ飲み食いをしたんですからね。それも物凄い量を。それが返せるまでここで働いてもらいます」

「い!?じょーだんじゃねえ、食ったのはクロッサルとこの親父だろ。なんであたしが働かなきゃいけねえんだ」

「お仲間でございましょう。お仲間の責任は皆様の責任でございます」

「だから、2人にやらせりゃいいだろ。あたしは知らん」

「そういう態度に出るのなら、こちらにも考えがございます」

「んだよ」

「勿論、政府に突き出します」

「ちょ、ちょっと待ってください。セナ、やめろよ」

「んでだよ、カンケーねえもん」

「わかりました。では」

「待って、待ってくださいっ」

支配人が連絡しようとした時、勢いよく扉が開いた。

 

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