第5話

 

次の日、一行はシュバーレの街についた。

ここは商人の街と呼ばれるだけあっていろいろな物や趣向があった。

「おおっ、すげぇな、ここは」

「ああ、ここは世界中から商品が運ばれてくるらしいからな」

「へぇー、セナって案外物知りなんだな」

「アレフ、案外っていうのはどういう意味だ。え?」

「いやあ、その通りの意味っす」

「ったく、なに二人で漫才してやがんだ」

そのうちに3人は遠くの方に人ごみを見つけた。

「あれはなにやってんだ?」

「さぁ」

「行ってみりゃあいいじゃねぇか。行くぜ」

人ごみを掻き分けて前にでるとそこには年齢不詳の男がいた。

「さあさ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。あ、ちょいとそこの美しいお嬢さん。

あ、そっちの美少年さんも。あ、社長さん。可愛い子入ってますよ」

キャバレーかここは!!

と、とにかくその男は杖を取り出すとなにやら呪文を唱え始めた。

「お代は見てのお帰りでぇ。ま、一興お付き合い下せいませ」

「な、なにやんだろうね、セナ」

「し、静かにしてろ」

「深海の奥深きに沈みし、神に守られし者よ。我に力を与えたまえ。

すべての大いなる力を一点に集め、白き光りとなりて我の前に現れよ・・・・・・。ゴッドロック!!!」

男は両手を挙げて叫んだ。

その瞬間、男の周りに白い光が集まってきた。

光は男を包み込んでから線になって地面の中に吸い込まれた。

「さあさ、これからだよ。よぉく見てないと見逃しちまうよ」

「ゴクッ」

アレフは唾を飲み込んだ。

男が手を翳すと地面から土が抉り取られて男の前に積み上げられた。

その土が人の形のように変形していく。

男の顔は笑っていたが目は真剣だった。

「それっ」

男は両手を伸ばして魔力を送ると大きな風呂敷をその上にかけた。

「さあさあ、これを見なきゃ損だよ。いいかい、一、二のそりゃあっ」

男が風呂敷を高く放り投げるとそこには神がいた。

正確に言うと土でできた神の人形なのだが、その出来栄えは素晴らしく神々しかった。

「す・・・すげぇ・・・」

クロッサルが思わず声を上げた。

セナも目を見開いて食い入るように見ている。

「どーだい、これを芸術と言わずしてなんと言う。この神に感動しねぇ奴がいるもんか。さあさ、どーもありゃあとさんでした」

男がペコリと頭を下げると周りから歓声がおこり、金が飛ばされた。

「どうもっどうもっ」

男はニタニタ笑いながら金を拾っている。

転がった金貨を拾おうとして男はセナの足元に来た。

「ん?」

男が顔を上げる。

「え・・・」

じぃっとセナの顔を見つめる。

「ん――――――」

「な、なんだよ」

「姉ちゃんの顔、どーっかで見たことあんだよなー」

「はぁ?あたしはお前なんか知らねぇぞ」

「んー、ま、いいか。どうだったかい、俺の芸」

「げ、芸なんですか?今のっ」

アレフは思わず叫んだ。

「あーそりゃあね、あんなのは魔術のうちにゃあ入らねえよ」

「おっさん、ここでいつもやってんのか」

クロッサルが自分の足にぶつかった金貨を拾いながら言った。

「そーだなぁ、今の所ここでやってるよ」

「今の所?」

「ああ、俺はこれでも一応魔術師でね。まー旅の資産集めってとこかな」

「ふーん・・・」

「それにしても姉ちゃん美人だね。どうだい俺と今晩・・・」

「な・・・ふ、ふざけんじゃねぇっ」

男がセナの胸を突ついたのでセナは男を殴り飛ばした。

「ぐえっ」

男は地面を2mぐらい転がった。

「あーっ、セッ、セナッ。なんてことを・・・」

「うるせえっ、こここいつが変なことするからっ」

セナは顔を真っ赤にして言った。

「いちちち・・・姉ちゃんすげー力だなあ」

男は起き上がって頬を撫でながらニヤッと笑った。

 

「こ、この野郎・・・」

「あ、あの大丈夫ですか?」

「ああ、なんとかな。兄ちゃん達は旅のもんだよな」

「え、あ、はい。そうですけど」

「目的はなんだい?」

「は?目的・・・ですか」

「そーだよ。なんの理由も無しに旅なんかしねえだろ」

「いや、その俺はセナに借りを返すために・・・」

「セナ?姉ちゃんセナっていうのかい?」

「・・・・・・ああ、それがどうした」

「セナ・・・セナねぇ・・・。あーそうだ思い出したぜ。セナっていう名前どっかで聞いたことあると思ったんだよなぁ」

アレフは思った。

(どうせこの人も鋼鉄のセナってことを言うんだろうな)

「ハーベンハイム王国の王女の名前だよ」

「え・・・」

「ハーベンハイムって確か10年前くらいに滅ぼされた国の名前だよな、おっさん」

「ああ、そうさ。そこの王女の名前がセナって言ったんだ」

「へぇーそうなんだ。知ってたか、セナ」

「・・・・・・・・・」

「セナ?」

「え?あ、し、知らなかったぜ、そんなこと」

「まーセナっていう名前も結構あるからなー。そういうこともあんだろ」

「その点俺の名前は同名なんかいねえからよぉ」

「へぇーおっさん、なんて名前なんだよ」

男は誇らしげに言った。

「俺の名前か?俺の名はなぁ、タータビネーニョ・カミールクロス・イースタリオンって言うんだ」

「・・・・・・はぁ?」

「なんだって、もう1回言ってくれ。おっさん」

「だから、タータビネーニョ・カミールクロス・イースタリオンだよ」

「えーと、タータビナニョ・カメールキタヌ・タータリンでしたっけ?」

「タータビネーニョ・カミールクロス・イースタリオンだ!!」

「わーったわーった。タータビネーニョだな」

「め、めずらしい名前ですね・・・」

「そーか?俺は結構気に入ってんだがな」

「あ、俺はアレフレッド・サンダロスって言います。こっちは・・・」

「クロッサル・マイファナルだ」

「で、セナです」

「セナの名字はなんてんだ?」

「え・・・なんて言うんだろ」

「そーいや、俺も知らねえな」

「セナ、セナの名字ってなんだい?」

「・・・・・・あ?」

セナはじろりとアレフを睨んだ。

(こ、こわい・・・)

アレフは怯えてクロッサルをちらっと見た。

「セナの名字だよ、なんてんだ?」

「知らねー」

「そ、そうか・・・知らねえそうだ」

「ほー、まあいいさ。で、お前らの旅の目的は?」

「お前はなんでなんだよ」

セナが凄んだ声で言った。

「俺か?俺はさあ、美女の国を捜しているんだ」

「「「・・・・・・」」」

あたりがシーンとなった。

「なははは、ジョーダンだよ。俺の目的は究極の魔術ラドータを探す事さ」

 

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